Apple iOS12の変更点をデザインから見る

ついに先週末に発売されたiPhone Xsシリーズ 。
私は昨年発売されたiPhone Xを使用しているので、今回は見送ることにしました。
毎年発売される新端末に目を奪われがちですが、個人的には毎年アップデートされるiOSに興味があって、リリース日は深夜2時を毎年正座で待っています(信者ではありません)。
今年も端末の発売に先駆け、iOS12が18日にリリースされました。
新機能についてやアップデートされた機能については公式サイトや他のサイトでたくさん紹介されているので、今回はiOS12のアップデート内容の一部をデザインの視点から見てみようと思います(狭義的な意味のデザインではなくUI・UXを含むデザインとします)。
また、今回紹介できる内容は時間的にも自分が気付いたごくごく一部の内容になります。
変更点
1 Face ID
iPhone Xのリリースに合わせてiOS11から追加されたFace IDですが、画面を見るだけで良いという便利さの反面、不便な面もありました。
それが 認証失敗時の再認証
です。
画面と顔の距離が不適切であったり寝起きなどで認証が失敗することがどうしてもあるのですが、その際に再認証する方法がいまいちハッキリしないのです。
画面を見直すと自動で再認証されることもあればそうでないこともあり、手動で再認証するにはパスコードを入力するか電源ボタンを押して一度画面をOFFにする(タイミングによってはApple Payが起動してしまう・・・)かしか方法がありませんでした。また再認証するにはどうしたら良いかユーザーが画面から理解できる要素も用意されておらず、ユーザーの経験が必要でした。(シグニファイアの欠如)
iOS12ではその点がOSレベルで改善されました。
認証が失敗すると、その旨のメッセージが表示され、画面をサイドスワイプアップすることを求めるアニメーションが表示、スワイプアップで再認証を行えるようになりました。
ユーザーに認証の結果を確実に伝え、次に何をしたら良いかをアフォードするデザインに変更されています。
個人的にはこの変更によって明らかに使い勝手がよくなったと感じています。
正直、Face IDが失敗するケースは日常で多々あり(精度によるものでなく方法の問題)、Touch IDの方が使い勝手がよかったなぁと思っていましたが、iOS12になってからは個人的にTouch IDに戻れないというレベルになったと思っています。
2 通知センター
通知センターでは通知がアプリ毎にグループ化されてるようになりました。
これまで通知はアプリに関係なく時系列で表示され、通知が多いメッセージアプリなどの通知で通知センターが埋まってしまうということもありました。
iOS12のアップデートでは同じアプリで複数の通知がきた場合は、アプリごとにまとめられ最新の内容のみ確認できる状態になります。
まとめられている状態で通知をタップするとグループ化が展開され、過去の内容を確認することができます。
このグループ化によって大事な通知を見過ごすことは減ったのではないかと思います。
ですがデザイン的に少し分かりにくいものになっているなぁと思ってしまった部分もあります。
まずひとつ目に、グループ化されている状態で通知をタップした際にアプリが起動するのかグループ化が展開するのか分かりにくい点です。
グループ化されていない単体の通知では、通知をタップすることでアプリが起動します。この経験から構築された概念モデルを持っているユーザーにとって、この動作の違いによって違和感を持ったり戸惑ってしまうことがあるでしょう。
ふたつ目はグループ化を展開した後の動作にも一部分かりにくさがありことです。画像のように「表示を減らす」と「×」のボタンが並んでいますが、実際に操作をしてみるとグループ化を閉じるにはどちらを押すのか一瞬迷ってしまうことがあります。
この辺は慣れや経験の部分もあるとは思いますが、UIデザインでは一般になっているシェブロンを使用するなど他の方法もあったのではと感じます。
3 タスクキル
iPhone Xを使い始めて不便になったことのひとつとしてタスクキルを行うのに1ステップ増えてしまった点がありました。
従来では、
タスク管理画面を開く → タスクキルしたいアプリをスワイプアップ
という2ステップが
タスク管理画面を開く → タスクキルしたいアプリを長押し→「×」ボタンを押下
の3ステップ必要になってしまいました。
物理ボタンが無い端末なので、スワイプアップのジェスチャーがホーム画面に戻るジェスチャーに近いので誤操作を招くと判断したのだと思います。
実際にはこの1ステップは非常に煩わしいものでした。
iOS12ではこの部分も改善されています。

4 写真アプリ
写真アプリのデザインも大幅に変更されています。
今まで、アルバムが複数ある場合縦に長く追加されていくようになっていました。

iOS12ではアルバムは横に増えていくようになっており、またFor Youというメニューも追加されました。

最近、UI・UX界隈では、ユーザーはそもそも縦に長いコンテンツをスクロールして見ることに疲れているのでは無いかというような考えが一部で主張されています。
近年のモバイルアプリでは機械学習などによってユーザーの好みを学習し自動でおすすめコンテンツを表示するサービスが増えてきました。これによってユーザーは自らスクロールする必要がなく、欲しい情報を取得できるようになったからという考え方です。
InstagramアプリのStoriesではフォローしているユーザーの投稿がおすすめ順に自動で横にスクロールして表示されますし、Twitterアプリの今日のモーメント機能でも同じように横スクロールが採用されています。Netflixのアプリでも縦スクロールに合わせて横スクロールが効果的に使用されています。
今回のiOS12ではSiriによるおすすめの写真やアルバムを表示する「For You」機能の搭載や、アルバムの横スクロール表示はそれらのトレンドも一部で意識しているのかもしれません。
5 おやすみモード
iOS6で搭載されたおやすみモードですが、今回のアップデートでより生活に寄り添ったデザインに進化しています。
今までも、おやすみモードを時間指定で作動させることができましたが、iOS12ではさらに細かな設定を行えるようになりました。
まず、ベットタイムモードとの連携が行えるようになりました。ベットタットタイムモードは目覚ましの設定を自動化したり睡眠時間のログを残すことができる機能ですが、ベットタイムモード中に自動でおやすみモードに設定することができるようになりました。
また、おやすみモードの開始をイベント終了などのタイミングで指定することができるようになりました。
おやすみモードをマナーモードのように使用するユーザーも多いので、この機能をうまく使うことでより便利になるかもしれません。
さらに、個人的に地味だけどいいなぁと思ったのが、ベットモード・おやすみモードが終了した時(=アラームで目覚めた時)に専用のウィジェットが表示されるようになったことです。
確認できることは最低限ではありますが、なんだか嬉しい気持ちになるのは私だけでしょうか。
まとめ
Appleは今回のiOS12のテーマについて
「生活のショートカット」
と題しているようです。
必要な情報を適切なタイミングで表示したり、乱雑な情報をひとまとまりにする。
生活に寄り添った機能を新しいデザインと共に提供する。
今回取り上げ機能はごく一部ですが、それでも「生活のショートカット」な部分は見て取れるのではないでしょうか(公式アプリとして新しく追加された「ショートカット」も機能的にもデザイン的にも魅力的ですが、以前からリリースされていた「Workflow」のリニューアルなので触れませんでした)。
近年のOSのアップデートは地味でつまらないというような意見もありますが、今回紹介したような細かいデザインレベルでは確実に年々進化しています。
毎年、新しい端末の話題で持ちきりになってしまいますが、OSの方に目を向けてみると新しい進化に気がつくかも知れません。
参考
https://www.apple.com/jp/ios/ios-12/