【Photoshop】 スマートな髪の毛切り抜きテクニックを求めて

皆さんはPhotoshopと聞いて何をイメージするでしょうか。
画像を調整したり整形するツールだという以外に、機能がたくさんあって取っ付きにくいというイメージがある方は多いのでは無いでしょうか。
かく言う自分も写真の色調補正やポートレートの肌の補正などでしか使ったことがなかったのですが、業務で使用することが増えてきたこともあって学習を進めていて、その中で真っ先に立ちはだかった壁が画像切り抜きをする上での機能とアプローチの多さでした。
単純な画像を何も考えずに切り抜くだけならなんとなく感覚でできるのですが、この先さらに複雑な画像を扱うケースが出てくることを見越して、今回はPhotoshopの画像切り抜き方法をいくつか調べ実際に行ってみましたので紹介したいと思います。
ただ、前述した通りPhotoshopのテクニックは本当に多様で同じ方法でも手順や設定値が異なったりと、全てを紹介することはできません。
なので今回は、複雑過ぎない画像をスピーディーに、かつある程度のクオリティを見込めるであろうと言うスマートな方法はどれかと言う観点で見ていきたいと思っています。
使用する画像
今回使用する画像はこちらです。
巻き毛の部分が切り抜きの練習になりそうですね。
選択とマスク
まずは「選択とマスク」機能を使用して切り抜きを行なう方法です。
「選択とマスク」機能はその名前の通り、選択とマスクに特化したワークスペースです。
ここ数年で機能が充実・進化してきた機能で画像切り抜きを行う上でまず名前が挙がる機能です。
1. クイック選択ツールで選択する
まずは「クイック選択ツール」を選択し、選択したい部分を大まかになぞっていきます。
今回使用する画像は背景が単純なので、この時点で大きなずれなく選択できると思います。
2. 選択とマスク機能
続いて「選択とマスク」画面を開きます。
上部メニュー から
選択範囲 → 選択とマスク
を選択します。(Macの場合はCommand + Option + R
でも開きます)
すると以下のような画面が開きます。
これが選択とマスクワークスペースです。
初期設定の背景では切り抜き部分がわかりにくいので、「表示モード」を黒に変更します。(画像によって適宜変更します)
うまく選択しきれていなかった部分が明確になります。
ここからはいくつかの機能を使用して選択を詳細にしていく工程になります。
まず、エッジの検出を行います。
今回は半径を60px, スマート半径の項目にチェックを入れています。
そして境界線調整ツールを使用して、うまく選択できていなかった部分をなぞって選択していきます。
パッとなぞるだけでここまで調整することができます。
(使用する画像によってこの段階で境界線が怪しい部分がある場合は「グローバル調整」メニューの「エッジをシフト」を-5%程度、「出力設定」の「不要なカラーの除去」にチェックすると良いかもしれません)
完成
「選択とマスク」を完了し切り抜きを行うとこのようになりました。
もちろんもっと丁寧に切り抜く場合はさらに調整が必要かとは思いますが、これでもかなり綺麗に切り抜きができていると思います。
特徴
この方法は冒頭にも書いた通り、Photoshopでは王道の切り抜き方法であると思います。
機能自体が充実されてきていることもあって、ほとんどこの機能で対応できるのではないでしょうか。
問題があるとすれば、ものすごく複雑な背景の画像などを扱う際は選択にテクニックや段階的な微調整が必要になってくる部分が挙げられるかもしれません。
一連の作業の様子
チャンネル設定
続いてはチャンネル設定を使用した切り抜き方法です。
切り抜く被写体と背景のコントラスト差を利用して選択します。
1. チャンネル設定
「チャンネル」メニューからチャンネル設定を行います。
レッド・グリーン・ブルーの中からもっとも背景とのコントラストが大きくなるものを選択します。
今回はグリーンを選択します。
編集のためグリーンのチャンネルを複製します。
2. レベル補正でコントラストを調整する
続いて、「レベル補正」メニューを開きます。(MacではCommand + Option + L)
ここでは被写体を黒潰しすることを目的にコントラストを高めていきます。
少し慣れが必要ではありますが、「入力レベル」の白レベルを以下のように調整しました。
すると以下のように被写体の大部分が黒く潰れ、背景との差が明確になりました。
3. 被写体を塗りつぶす
Step2で黒潰れしなかった部分を手動で塗りつぶしていきます。
「ペン」ツールを選択し、カラーを#000000に設定します。
そして黒く塗りつぶされなかった部分をなぞっていきます。
このように切り抜かない部分が真っ黒に塗りつぶされました。
次に現在編集しているチャンネルのサムネイルをCommand
を押しながら選択します。
すると背景部分が選択されたと思います。
最後に
レイヤー → 画像レイヤーを選択 → deleteキー押下
で切り抜きの完了です。
完成
特徴
この方法は見てもらうとわかる通り選択を手で行わないので、手作業によるミスを減らすことができる方法だと思います。
作業時間も慣れてしまえばかなりスピーディーに行えるはずです。
問題点としては、背景と被写体のコントラストがつきにくい画像を扱う際にはかなり難しく繊細な作業が必要になってくるところがあると思います。
一連の作業の様子
背景消しゴム
次に行うのは「背景消しゴム」を使った方法です。
「背景消しゴム」はその名の通り背景を消すことができる機能です。
この消しゴムでなぞった部分は背景が透過されます。
そのため、作業としては絶対に切り抜かない部分を選択しそれ以外の部分を「背景消しゴム」で消していくという流れになります。
1. クイック選択ツールで選択する
今回もまずはクイック選択ツールで切り抜かない部分を選択していきます。
ですが、ここで異なる点として選択するのは絶対に切り抜かない部分のみです。
人物であれば顔や腕などの肌が出ている部分、衣服などを選択することになります。
ちなみにクイック選択ツールで離れた部分を選択するにはShift
を押下しながら選択します。
2. 背景消しゴムで背景を削除する
「背景消しゴム」を選択します。
ツール設定で以下の項目を設定します。
ブラシサイズ : 大きめ(画像に応じて)
制限 : 隣接されていない
許容量 : 30%程度
設定が完了したら実際に背景を削除していきます。
選択した範囲にのみ効果が適用されるので、1番の手順で選択した範囲を反転させます。(MacであればCommand + Shift + i
)
これで切り抜きたくない部分はマスクされた状態になります。
背景消しゴムツールで消したい部分をなぞっていきます。
髪の毛の境界部分をなぞってみると髪の毛部分は消えずに背景部分のみが消えるのがわかると思います。
完成
特徴
この方法は、「消したくない部分をマスクして、それ以外を消す」という一番直感的な方法かと思います。
また、消すという工程が手動なので背景が複雑な画像においても応用が効く方法です。
ですがその反面削除の工程で時間がかかってしまったり、手作業による消し残しが発生するなどミスが起きやすい方法とも言えるかもしれません。
一連の作業の様子
被写体選択
4つ目はおまけなのですが、Adobeが近年力を入れて開発しているAdobe Senseiを用いた選択方法を紹介します。
Adobe Senseiは人工知能とマシンラーニングを統合した技術であり、今まで人間が手で行ってきた作業がボタン一つでできるようになる要注目な技術です。
紹介する機能はこの「被写体を選択」という機能です。
実際にこの機能を使ってみると、Adobe Senseiが画像の中の被写体を判定し、自動で選択が行われます。
この機能を使って選択を行ったのが以下の画像です。
クイック選択ツールで選択したものと比べても全く遜色ないレベルであることがわかると思います。
この後は「選択とマスク」機能や背景消しゴムツールなどを使用して切り抜きを行っていきます。
一連の作業の様子
まとめ
今回は複数あるPhotoshopでの画像切り抜きについて、手軽かつ品質が見込めるいわゆるスマートな方法を探ってみました。
ここまで書いて分かったのはそれぞれの方法に良い面と悪い面があって、一概にどれが一番かというランキングをつけるのは難しいということです。
ですが、試してみて感じたのは
手軽に切り抜きを行いたい場合は、
「被写体の選択」→ 選択の具合に応じて「選択とマスク」あるいは「背景消しゴム」で背景を削除。
背景がホワイトバックなど単色の場合は、
「チャンネル調整」。
背景が非常に複雑な場合は、
マスクと「背景消しゴム」、または「選択とマスク」で段階的に丁寧に切り抜いていく。
のがいいのではないでしょうか。
もちろん、これらの方法以外にも様々なアプローチやもっと丁寧なやり方があるはずなので、今後もいろいろな方法を試してみたいと思います。
また、今回少し紹介した「Adobe Sensei」を活用した技術は非デザイナーでも注目するべきだと思うので、ぜひこの機会に覚えておくと後悔はしないかと思います。
参考
https://helpx.adobe.com/jp/photoshop/how-to/crop-using-select-mask-tips.html